労働条件通知書と雇用契約書の違いと作り方

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労働条件通知書と雇用契約書の違いと作り方

公開:2019-05-30 更新:2020-01-27

 
2019年4月より労働条件通知書の電子化が解禁されました。

しかしそもそも労働条件通知書って何でしょうか?
雇用契約書との違いは何でしょうか?

労働条件通知書と雇用契約書の法的な違いを中心に、作り方も見ていきましょう。

社労士・岩壁
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法的な決まりがある労働条件通知書と、ない雇用契約書。
似て非なるものです。両者の違いを整理していきましょう。

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1.労働条件通知書と雇用契約書の違い

1-1.労働条件通知書

労働条件通知書は企業が労働者(採用予定者)に一方的に労働条件を通知するものです。
雇用契約書と違って、そこに合意があったかどうかは問いません。

労働基準法では労働条件を明示するよう義務付けています。

使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。この場合において、賃金及び労働時間に関する事項その他の厚生労働省令で定める事項については、厚生労働省令で定める方法により明示しなければならない。労働基準法第15条1項

1-2.雇用契約書

雇用契約書は使用者・労働者がお互いに労働条件について合意した証として取り交わす書面です。

雇用契約を書面で締結すること自体は法では求められていません。
民法上では雇用契約に限らず契約自体が口頭でも成り立つものですが、一方で書面で契約書を締結することがビジネスにおいては一般的です。

それはトラブルが起こった時の証拠という観点が大きなポイントの一つです。
そして事前にきちんと契約条件をお互いに確認することによってトラブル抑止にもつながります。

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雇用契約書の内容が曖昧である場合は、
トラブル時に会社に有利に働かないことがあります。
書面の作成や締結業務は事務作業かもしれませんが、
雇用契約書は会社を守るためのものです。
きちんとした内容とプロセスで締結してください。

1-3.実務的な取り扱い

労働条件通知書は法的に作成義務である一方、雇用契約書には作成義務はありません。

ですから雇用期間の定めがない正社員の場合は雇用契約書を書面で締結しないことが一般的です。

一方、契約社員は有期雇用契約であるために雇用契約書を締結するケースが一般的です。
契約書がないと企業側が「有期契約だ」と言っても、何の証拠にもなりません。

正社員は原則として本人が自己都合退職するか定年になるまでは在籍します。
契約期間の更新という概念がないため労働条件通知書で条件明示だけして済ませるケースが多くなります。

しかし雇用契約期間のない正社員であっても、労働条件通知書だけでは本当に本人がその内容をきちんと理解したかどうかを確認する手段がありません。
正社員であっても入社承諾書の中に「労働条件の内容を合意した」旨を記載しておいた方が良いでしょう。

実務的に多い取り扱い

・雇用契約期間のない従業員(=正社員)の場合は労働条件通知のみで済ます
・雇用契約期間ありの従業員(=契約社員など)の場合は労働条件通知書と雇用契約書を兼用する

2.労働条件通知書の電子化解禁

今までは次のとおり労働条件通知書は書面が義務付けられていました。
 

法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。
(旧)労働基準法施行規則第5条3項

 
2019年4月1日の改正により、従来の3項が4項に移り、次のように但し書以下が追加されました。
 

法第十五条第一項後段の厚生労働省令で定める方法は、労働者に対する前項に規定する事項が明らかとなる書面の交付とする。ただし、当該労働者が同項に規定する事項が明らかとなる次のいずれかの方法によることを希望した場合には、当該方法とすることができる。
 一 ファクシミリを利用してする送信の方法
 二 電子メールその他のその受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信(電気通信事業法(略)第二条第一号に規定する電気通信をいう。 以下この号において「電子メール等」という。)の送信の方法 (当該労働者が当該電子メール等の記録を出力することにより書面を作成することができるものに限る。)
(新)労働基準法施行規則第5条4項

 
この改正でのポイントは3つです。

改正ポイント

①労働者本人が希望したこと
②受信者を特定して情報伝達するための電気通信であること(電子メール等)
③書面出力できること

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雇用契約書は要件を満たしていれば今までも電子で対応できましたが、
労働条件通知の方は書面が義務でした。
ですから労働条件通知と雇用契約書を兼用する場合、
必ず書面にしなければならず特にIT化が進んでいる企業では非効率だったのです。
今回の改正で条件通知と雇用契約が兼務であっても電子化対応できるようになり、
実務担当者の手間は軽減されたと言えます。

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3.労働条件通知書の作り方

3-1.記載すべき内容

労働条件通知で明示しなければならない内容は次のとおりです。
 

①(1号)雇用契約の期間
②(1号の2)契約更新する場合の基準
③(1号の3)就業場所、従業すべき業務
④(2号)始業・終業時刻、所定労働時間を超える労働有無、休憩時間、休日、休暇、労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換
⑤(3号)賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)、計算・支払い方法、賃金締日・支払日、昇給
⑥(4号)退職事由(解雇事由含む)
⑦(4号の2)退職手当(定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算・支払い方法、支払い日)
⑧(5号)臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与、これらに準ずる賃金、最低賃金額
⑨(6号)労働者に負担させるべき食費、作業用品その他
⑩(7号)安全、衛生
⑪(8号)職業訓練
⑫(9号)災害補償、業務外の傷病扶助
⑬(10号)表彰・制裁
⑭(11号)休職
労働基準法施行規則第5条1項(抜粋要約)

 
・①~⑤ ⇒ 明示義務があり、かつ書面等で交付しなければならない
・(上記⑤のうち)昇給のみ ⇒ 明示義務はあるが書面等での交付義務はなし
・⑥~⑬ ⇒ 定めがある場合には明示しなければならない
(明示してもしなくてもどちらでも良いという意味ではありません)

表にまとめると次のようになります。
 

必ず明示する 定めがあれば
明示する
書面等の交付義務
①雇用契約の期間
②契約更新する場合の基準
(更新がある場合のみ)
③就業場所、業務
④始業・終業時刻、他
⑤賃金、他
(⑤のうち)昇給
⑥退職事由
⑦退職手当
⑧臨時賃金、他
⑨労働者負担の食費、他
⑩安全、衛生
⑪職業訓練
⑫災害補償、他
⑬表彰・制裁
⑭休職
社労士・岩壁
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トラブル防止の観点からは書面交付の義務がなくても
きちんと記載した方が良いでしょう。
⑥退職金も制度がないのであれば明示義務はありませんが、
賃金関係は特にトラブルになりやすい項目です。

3-2.作り方

厚生労働省の主要様式ダウンロードコーナーにひな型があります。

ひとまずこれを使うこと自体は良いですが、ひな型はあくまでひな型です。
自社に合うようにカスタマイズし、誰が見ても分かりやすく事後トラブルの無いようにすることが大事です。

記載義務があるかないか、というだけの基準で作成することは危険です。

なお事業主の署名や押印までは要求されていません。
しかし押印して渡した方が労働者側から見ても安心材料になりますので、可能ならば押印して渡した方が良いでしょう。

4.雇用契約書の作り方

4-1.内容は労働条件通知書と同じで良い

雇用契約書は厚生労働省ダウンロードコーナーにはひな型がありません。
(おそらく雇用契約書の書面作成は法律上の義務ではないからというのが理由です)


実務的には有期雇用契約(契約社員やアルバイト)の場合にのみ雇用契約書を作成することが大半です。

手間を省くために労働条件通知書と兼用させて作成した方が良いでしょう。
内容も労働条件通知書と同じく作成すれば大丈夫です。

兼用させる場合はタイトルを「労働条件通知書 兼 雇用契約書」としましょう。

そして同じものを2通作成し、1通ずつ会社と労働者が保有することが一般的です。

4-2.有期雇用契約時の注意点

有期雇用契約は時に悪用され、突然の雇止めをされることがあります。
厚生労働省では有期雇用契約が良好な雇用形態として活用されるために、有期雇用契約については次の事項を明示するよう基準を定めています。
 

1 契約締結時の明示事項等
(1)使用者は、有期契約労働者に対して、契約の締結時にその契約の更新の有無を明示
しなければなりません。
(2)使用者が、有期労働契約を更新する場合があると明示したときは、労働者に対し
て、契約を更新する場合又はしない場合の判断の基準を明示しなければなりません。
(3)使用者は、有期労働契約の締結後に(1)又は(2)について変更する場合には、
労働者に対して、速やかにその内容を明示しなければなりません。
厚生労働省「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準について」

 
・更新の有無
・更新がある場合の判断基準

の2つがポイントです。

更新の判断基準は前記「労働基準法施行規則第5条1項1号の2」でも明示するよう規定されています。
これらを労働条件通知書兼雇用契約書に盛り込むようにしてください。

5.雇用契約更新時の注意点

雇用契約書は書面に残すことによりトラブル未然防止とトラブル発生時の証拠書類になります。

しかし仮に更新のたびに毎回雇用契約書を結んでいたとしても、企業側の対応が雑だった場合はトラブル発生時に企業側不利に働く可能性があります。

企業側が不利に働く例

・そもそもの契約内容に曖昧な部分が多い
・更新時に面談やフィードバックがない
・更新後の雇用条件についてきちんと説明しない(ハンコだけ押させて終了、など)

従来は人件費を抑制するために有期雇用することが世の中では多くありましたが、働き方改革関連法には同一労働同一賃金も含まれます。
これからは賃金抑制のために有期雇用契約にするのではなく、労働者の役割や業務量に応じて適正な対応をしていくことが求められています。

6.まとめ

・労働条件通知書は企業側が一方的に通知するもので法的作成義務あり
・雇用契約書は双方が労働条件に合意したもので法的作成義務なし(有期契約の場合に作られることが一般的)
 ⇒ 実務的には労働条件通知書と雇用契約書を兼用して同じ内容にする
・有期契約の場合は更新の有無とその判断基準を盛り込む
・雇用契約書を締結していても、運用が雑な場合は会社に不利に働くことがある

社労士・岩壁
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何となくで良ければひな型を使えば良いと思います。
しかしトラブル防止という意味では書面は命です。
適当に作ったものでは後々会社が不利になる可能性もあるため、
きちんとした専門家チェックを入れた方が絶対に良いと言えます。

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